本文へスキップ
はたらく

ねぎを光らせたひと。“くだらない”に、本気になる。──成瀬さんにきいてみた

白石 恭一
白石 恭一
広報・採用・事業開発担当
ねぎを光らせたひと。“くだらない”に、本気になる。──成瀬さんにきいてみた

8月からはじまった「堀商店のよみもの」。
「はたらく」というカテゴリでは、“楽しい”をつくる会社の、内側にいる人たちに、かしこまらず、普段の雑談みたいにいろんな話をきいていきます。

記念すべき初回は、取締役 ゼネラルマネージャーの成瀬昭則さん。
肩書きだけみると、とっても偉い人のはずなのに、ご本人は開口一番、自分の人生を“負けっぱなし”という。
ではなぜ、20年あまりも、堀商店でおもしろがっていられるのか。
じっくり話をきかせてもらいました。

“地球儀のビーチボール”に、応募した

成瀬さんが堀商店に入ったきっかけは、本人いわく“ペラペラ”。
薄い、たいしたことのない、と照れながら話してくれました。
入社は2005年、当時20代前半。
事務や工場の仕事を経て、「なにか楽しい仕事はないかな」と求人を眺めていたときに、堀商店を見つけた。
問屋という商売にも馴染みはなかった。
ただ、通販サイトを開いて並んでいる商品を見ていたら——。

地球儀のビーチボールって何それ、面白い。こんなくだらないものを売っている会社があるのか、って。今でも覚えています。眩しく見えたんですよね。

くだらない、が最上級の褒め言葉として使われている。
その一点に惹かれて、勢いで応募ボタンを押したのだといいます。

成瀬さんは、自分のことを終始“負けっぱなしの人生”といいます。
その原点は、中学時代にありました。

中2で最初のポケモンをやって、めちゃくちゃ面白くて、すごく悔しかった。世の中にはこんな面白いことを考えつく人がいるのか、どうあがいても勝てない、って。

悔しくて、そこから30年間ポケモンに触れなかった。
つい最近、30年ぶりに手に取ったら、やっぱり面白い。

今でもこんな面白いものを作り続けているのか、って。まだ悔しかった(笑)。でも、結局、いいもの・面白いものを世の中に出して、みんなが笑顔になる。自分はそういうことを考える性分なんだろうな、と思いました。

勝ち負けにこだわる人が、勝てないものを前にして、それでもおもしろがる。
この矛盾みたいなものが、成瀬さんの芯にずっとあるようでした。

ちなみに入社の面接は、社長が直接。
当時の成瀬さんは、「堀商店は面白いから俺を雇ってくれ」と、会社への熱意ばかり語ってしまったそうです。

自分が何をやりたいか、みたいな話をほとんどしなかった。面接が終わってから一人で、言い過ぎた、自分のこと何も言っていないって反省しました(笑)。

それでもその熱は、ちゃんと社長に伝わった。
こうして成瀬さんは、堀商店の一員になります。

成瀬さんの人物カット
取締役 ゼネラルマネージャー・成瀬昭則さん

棚組みから、始まった

入って最初の仕事は、倉庫の“棚組み”。
しかも、誰も仕事を教えてくれない。

初日、夜10時半になっても終わらない。“これ何時までやるんですか”って先輩に聞いたら、“決めていない”って。やべえところに入っちまった、と思いました(笑)。

手が空けば「なにか仕事ないですか」と聞いて回る。
そんな倉庫の日々を、1年半から2年ほど。
やがて店頭の仕事もするようになります。
カタログをボンと渡されて、「あそこのお客さんに注文を聞いてこい」。
相手が誰かも、何を求めているかも分からないまま。
伝票は手書き、値段は記憶頼み。
怒られ、嫌な思いもしながら、店頭の仕事を3年ほど続けました。

そのうちに、通販部門が育ってくる。
「お前、通販をやれ」と配属がかわり、増えていくネットのお客さんに営業と販売をしていく。
これが、今の仕事につながっています。

正直なところ、入社前に思い描いていた仕事とは、まるで違ったそうです。
何度も辞めようと思った、と成瀬さんはいいます。

でも、最初に見た堀商店がすごく面白かったから。環境がどうであれ、辞めるのはもったいないな、と。頑張っている先輩たちを見て、負けてらんねえ、とも思っていました。

「思っていたのと違う」と感じたのは、最初の3〜4年だけ。
そこからは、ずっと面白い。

20年以上働いていて、いまだに面白いと思うことがめっちゃあるのは、すごく幸せでありがたいことだなと思います。

そして2024年、成瀬さんは現在の立場、取締役 ゼネラルマネージャーに就きます。
ただ、その役職を自分のためのものだとは思っていないようでした。

お客さんのため、一緒に働くスタッフのため。もっとやれ、期待しているぞ、っていう意味だと受け止めています。

仕事をする成瀬さん

休みの日も、つい商品を探してしまう

成瀬さんのオフはなかなかに可愛い。
30年ぶりのポケモンは、奥さんが横でポケモンゲームをやっているのを見て、知らない、可愛いポケモンたちに“ウズウズ”してしまったのがきっかけ。
別の用事のついでにポケモンセンターへ寄り、ぬいぐるみとキーホルダーを買って帰ったこともあるそうです。

おじさんになって、可愛いものは可愛くていいな、と思うようになりました。

例えばシルバニアファミリー。
若い頃は何とも思っていなかったけれど、40歳を過ぎたあたりからめちゃくちゃ可愛いな、と思うようになったと。
一番好きなのはモグラ。

キャンプも好き。
ただ、遊んでいても——。

何か仕事につながるものないかな、って、つい探しちゃう。焚き火をしていても、この中に放り込んだら陶器ができちゃうキットとか作れないかな、とか(笑)。

仕事とプライベートの境目が分からなくなりませんか、と尋ねると、こう返ってきました。

それは、仕事のことが好きで、楽しいと思っているからなんだろうな、と思います。

成瀬さんのデスクにある可愛いグッズ
成瀬さんの机に置かれている“可愛い”子たち

枯れた技術を、もう一度おもしろく

成瀬さんの仕事の芯を一言でいうと、“枯れた技術の水平思考”。
任天堂でゲームボーイなどを手がけた横井軍平さんの言葉です。
最先端ではなく、すでに世の中にある“枯れた”技術や定番品を、少しのアイデアで別のものに生まれ変わらせる、という考え方。

意識してやってきたわけじゃないんですけど、振り返ると、やってきたことは結局これだなと。ゼロイチのものなんて少ない。全く存在しないものはない。自分程度が考えつくことは、どこかで誰かが考えている。あとはそれをどの業界に向けるか、だけなんですよ。

その典型が、“光るねぎ”です。

きっかけは、あるお客さんから「オリジナルの商品を作りたい」と相談されたこと。
ありものを仕入れて売るだけでは、そのお客さんのファンは喜ばない。
もっとオリジナルを作るべきだ——成瀬さんはそういってしまい、自分で提案せざるを得なくなります。
そのとき、たまたま手元に光るスポンジの棒があった。
じっと見ているうちに——。

ねぎにしか見えなくなっちゃって(笑)。ねぎって、叩いたりかじったり、お祭りの絵にもつながるじゃないですか。これはハマるな、と。

緑のクリアファイルがそばにあったので、こっそり工作してみたら、本当にねぎができた。
隣で見ていたスタッフいわく、「緑のファイルで急にワーッと作り出して、試作までがとにかく早かった」。
翌日にはファイルのメーカーを呼び、「ねぎを作りたいので相談させてください」。
相手はポカンとしながらも、真面目に受けてくれた。
できあがった試作品は、「完璧」の出来だったそうです。

ただ、ジョイントの部分が外れてしまう、という問題が残りました。
ここで、堀商店メンバーの知恵が加わります。
実際の野菜についている、束にする結束テープを貼ってはどうか、というアイデア。

あれがあるから、よりリアリティが出た。天才だなと思いました。

光るねぎを触る成瀬さん
“ねぎにしか見えなくなった”ところから生まれた光るねぎ

さらに、社長のアイデアも入っています。
真ん中がパカッと開く、まるで野菜が入っているみたいなディスプレイ用の箱。
輸送費もかかるし値段も上げたくない、と渋る成瀬さんに、社長はこういったそうです。

“しょうがないだろ、いいもの作ったんだから”って。もっとシンプルに安く、って言われると思ったら、意外でした。

結果、その箱が「いいね」とお客さんに好評だった。
社長の勘は、当たっていました。

なぜ、ここまで“くだらない”ものに本気になるのか。
その問いに、成瀬さんはこう答えます。

“光るねぎ”なんて説明しても、誰も分からない(笑)。でも、ちょっと変わったものがあるよ、ってところから、お客さんとの会話が生まれたらいい。売れれば一番だけど、それ以上に、変わった商品が“会話のきっかけ”になれたら、と思っています。

くだらない、が、ちゃんと人と人をつなぐ。
地球儀のビーチボールに眩しさを感じた若者が、今度はつくる側で、同じことをやっているようでした。

光るねぎ(商品)
パッケージまでみんなのアイデアが詰まった「光るねぎ」

“いいとこ眼鏡”で、人を見るようになった

長いあいだ、成瀬さんは「社内でずっと一番下」だったといいます。
後輩がなかなか入ってこず、下がいない状態が続いた。
その頃の自分を、成瀬さんは、あまり良くは思っていないようです。

昔は、みんなライバル、絶対に負けたくない、って思っていました。自分でやればいい、ちょっと考えれば分かるじゃん、って。今思うと、気持ち悪いくらい(笑)。

それが、若い人たちが入ってくれるようになって、大きく変わったそうです。

今は、誰かが成長してくれると、すごく嬉しい。こんなこと考えるようになったんだ、すごいな、って。仕事も、昔は手から離れるのが怖くて渡せなかったけど、今は自分の考え方ごと渡せるようになりました。

変化のきっかけの一つが、堀(新太郎)さんがよくいっていた“いいとこ眼鏡をかけて人を見よう”という考え方でした。

悪いところは、探せばいくらでも見える。でも、仲間として一緒に働いているんだから、いいところを見て、伸ばして、活かして活躍してもらう。すごくいい考え方だなと思って。

もう一つ、成瀬さんが根っこで大事にしていることがあります。
“誰かの記憶に残る仕事”です。

自分が死んだ後でも、携わったものが誰かの思い出になっていたら嬉しい。“子どもの頃こういうおもちゃあったよね”“光るねぎ、俺も買った”とか。露天商のお客さんに言われたことがあって——お祭りに来るのは、付き合いたてのカップルかもしれない、幸せな家族かもしれない。誰かの思い出につながる仕事だと思ってやらないと、って。あれは鳥肌が立ちました。

記録より、記憶。
忙しい毎日だとつい忘れがちになるからこそ、時々ちゃんと思い出すようにしている、と成瀬さんはいいます。

成瀬さんと堀新太郎さんの会話
話しはじめると止まらない2人

堀商店らしさって、何だろう

「あなたにとって、堀商店らしさって何ですか」。
成瀬さんは、この問いに、いちばん熱を込めてこたえてくれました。

僕、“商店”っていう響きがすごく好きなんです。ダサいとか昭和っぽいとか、何屋か分からない部分とかあるけど(笑)。でも“商店”=商売って、人に寄り添う仕事だと思うんですよ。お客さんが来て、その人の要望をちゃんと聞いて、欲しいものを叶える。一人ひとりに寄り添った物売り。名は体を表す、ではないけれど、それが商店だなと。

堀商店が景品のおもちゃからテレビゲーム、文具へと商いの幅を広げてきたのも、お客さんの声を真摯に受け止めてきた結果だ、と成瀬さんはいいます。

効率を求める部分もあるけれど、根っこは効率じゃない。お客さんが叶えたい夢や目的に耳を傾けて叶える。それがうちらしさかな、と。……まあ、社長に答え合わせしたわけじゃないし、正解かは分からないですけどね。

最後に照れ隠しを一つ付けるところが、いかにも成瀬さんらしい。
それから、こんなことも話してくれました。

一人ひとりが堀商店だと思っていて。役割や立場は違っても、それぞれが自分が主役だと思って働いてくれるのが一番いい。いろんな考え方の集合体が、今の堀商店なんです。

デスクに座る成瀬さん

お気に入りの一品:ピクセルボトル

このシリーズでは毎回、その人のお気に入りの商品を一つ、紹介してもらいます。
成瀬さんが選んだのは、いちばん苦労して、いちばん思い入れのある“ピクセルボトル”。
光るドリンクボトルで、昔のファミコンのようなドット絵の見た目が特徴です。

ピクセルボトル(商品)。
ドット絵が目印のピクセルボトル

きっかけは、やっぱりお祭りでした。

この業界で働いているから、お祭りに行ってほしいんですよ。お祭りはなくなっちゃいけない。その“きっかけになるアイテム”になれるかもしれない、と思って。

自分がゲーム好きだから、ドット絵のボトルは絶対に可愛いし売れる、と直感。
最初は段ボールを切って試作して、「めっちゃ可愛いじゃんこれ」。
ところが、ここからが長かった。
思い描いたものが、どうしても作れない。

素材を膨らませて型に押し付けて作るんですけど、ドットの鋭い角が出せない。角を尖らせると、そこが薄くなって破れて、水が漏れる。飲み物を入れられなかったら、商品として終わりじゃないですか。

工場と何度もやりとりしたけれど、「できる」といわれたことが、実際にはできない、の連続。
角に少し丸みをつけ、印刷も折り合いをつけて、妥協点を探っていく。
社長の前で、何回も泣いたそうです。

社長は“妥協することも覚えなきゃいけない”“十分いいものできているだろ”って。でも、自分のお金じゃなく、会社の名前とお金を使うんだから、妥協したものは出したくなかった。こんな出来で発売したくない、って譲らなかったんです。

本当に売りたかった夏に間に合わず、悔しい思いもした。
それでも粘って、ようやく世に出したピクセルボトルは——。

香川の露天商の方に挨拶に行ったら、“お前あれすごかったな、ありがとうな”って。その方の中学生の娘さんにも、“成瀬、あれ本当にお前が作ったの?”って言われて(笑)。売れてよかった、みんながお祭りに来てくれたなら作ってよかった、って思いました。

勝てない、といいながら。
成瀬さんのつくったものは、ちゃんと、誰かの夏の思い出に残っています。

ピクセルボトルの説明をする成瀬さん
いちばん苦労した一品を語る

編集後記

「負けっぱなしの人生」と笑う成瀬さんの話は、気づけば2時間を超えていました。
“ゼネラルマネージャー”という緊張してしまう肩書きだけれど、出てくるのは地球儀のビーチボール、30年ぶりのポケモン、光るねぎ、シルバニアファミリー。
こんなに“くだらない”を大事にしている取締役がいるのか、と、なんだか嬉しくなりました。

でも、聞き終えて残ったのは、くだらなさの奥にある、まっすぐな一本でした。
誰かの思い出に残る仕事をしたい。
いいところを見て、活かす。
人に寄り添うのが、商店だ。

入り口は“ペラペラ”だったと、成瀬さんはいう。
でも、ねぎの薄皮を一枚ずつ剥いていくみたいに話を聞き進めていくと、真ん中には、“くだらない”に本気になる太い芯がありました。
ねぎを持ったポケモンといえば、カモネギ。
“勝てない”と30年離れていた世界に、成瀬さんは自分のねぎ(光るねぎ)を片手に、戻ってきました。
くだらないに、本気のまま。

光るねぎを抱える成瀬さん
ねぎを光らせたひと、こと成瀬さん

さて、次はだれに、堀商店らしさを聞きにいこうか。
「はたらく」、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。

この記事に登場した商品

白石 恭一
白石 恭一 広報・採用・事業開発担当

堀商店の話題はもちろん、駄菓子・玩具業界の魅力やお役立ち記事を発信していきます!「楽しい」をつくる、ワクワクの仕掛け人である皆さまのために。そしてその向こうにある笑顔のために。

関連記事